≪森太郎とモリーのお散歩日記≫津のお城にいってきました。著/近田文弘 絵/大野八生『さくら研究ノート』偕成社

春うららかな四月二日の日曜日。

森の読書猫森太郎とモリーは

津のお城にお散歩に出かけました。



津のお城は津の中心、丸ノ内にあります。

森太郎とモリーは桜橋のおはなしの森から

塔世橋をわたって、朝日屋さんをこえて、

丸ノ内にたどりつきました。




――お城だ!

ちびのモリーはびっくりしました。

――お城はね、もうないんだよ

森太郎は言いました。

――これは、櫓が再現されたものなんだって。



サクラはつぼみがふくらんで、

すこしずつ咲きはじめています。

 森太郎とモリーは先へ進みました。




本丸跡は日本庭園になっています。

――門。

ちびのモリーが言いました。

――うん。藩校の正門だって。

森太郎が説明をよみあげました。

――みんなこの門をくぐって、学び舎にはいったんだね。




背の高い木々が

たくさん植えられています。

――何の木かなあ。

モリーがじっと見つめます。




日あたりの良い場所に

馬酔木がありました。

白い細かな花がたくさん咲いています。




モリーは石の上を

跳んでわたりました。

水はながれていませんが

流れているつもりで

真剣に渡ります。




次は、お堀を見に行きます。




――きれいにつんである。

ちびのモリーが言いました。

おはなしの森にある、

木のブロックパズルを

モリーはむずかしくて中々完成させられないのです。

――すごい。




――おや、亀だ。

お堀をのぞきこんだ森太郎が嬉しげに言いました。

――ひなたぼっこだね。気持ちよさそうに、足をぴんとのばしてる。




鯉たちは群を作り、整列して泳いでいます。

一列で進んでいたかと思えば、ターンして二列になったり、

向こうから泳いできた別の列と合流して、

また別の列をつくったり……。

――ふむ。

森太郎は興味深げに見つめます。




お堀のサクラも、まだほとんどがつぼみです。

どのつぼみもふくらんでいますから、

開花はきっともうすぐです。





楽しみですね。


『さくら研究ノート』
著/近田文弘 絵/大野八生
偕成社
定価(1,600円+税)

春の楽しみの一つであるサクラ。

知っている樹木の筆頭にくるであろう

とても身近な木です。

けれど、身近だからこそ

生態は知らないかもしれません。

サクラといえば花が思い浮かびますが、

その花はいつごろから準備されているでしょう。

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子どもはちろん、大人も楽しめる

サクラの入門書です。

お花見の前に後に、

ぜひ、ご一読ください。